AI駆動開発とベンチャー回帰で創る次世代エンジニア組織

こんにちはVPoEの木村です。

会社として新年度を迎え少し経ちましたが、先月頭、エンジニア組織の今期以降の運営方針を社内向けに発表しました。今回はその方針について、ブログでもご紹介したいと思います。 テーマは「AIの最大活用〜新開発フロー・体制へ移行〜」「ベンチャー回帰〜ビジネス成果への直接貢献〜」です。

先期の振り返り
 〜再確認した内製エンジニア組織としての存在意義とAIの力〜

先期を振り返る時に欠かせないトピックとしてまず挙げられるのが、大規模メンテナンスを実施し、BUYMAのインフラ基盤をオンプレからAWSへ移行したことです。 事前に最大限リスクを取り除く努力はしたものの、一定のリスクを伴うビッグバン方式での移行になりましたが、やり遂げた後としては、なんとか力技で捩じ伏せることができたようなベンチャー感を思い出す感覚がありました。

長年運営してきたサービスの癖やパターンを知り尽くし、何があってもサービスを動かし続けてきた内製エンジニア組織だからこそ採れたアプローチだと思います。 また、時間的・人員的なリソースも十分とは言えないなかでも、AIをカウントされないプロジェクトメンバーとして、移行日直前に「本当はやりたいけど時間がない」という追い込みの作業を実現したり、移設中・直後の不具合調査の高速化などに活用することができました。

AI活用についてはそれ以外にも業務面、プロダクト面にも進み、リリースできた様々な機能追加や改善を振り返ると、数年分の成果を1年に詰め込んだような実りの多い期だったと感じます。今期はそんな成功パターンを組織全体へスケールさせていくため、「AIの最大活用」と「ベンチャー回帰」をテーマに前年踏襲をやめ、ドラスティックな方針転換を図ります。


方針1:AIの最大活用 〜新開発フロー・体制へ移行〜

「AIに仕事を奪われるのでは?」という漠然とした不安を持つのではなく、「全員でAI武装し『アベンジャーズ』になろう」というのが私たちのスタンスです。AIをフル活用可能な開発フローと体制に移行していきます。

新開発フロー

単なる作業の効率化にとどまらず、再構築された価値提供のパイプラインを生み出すために、下図のとおり全く新しいAI駆動開発フローへの移行を進めます。

AI駆動開発フロー

新開発フローのステップは以下の通りです。

  1. 設計(人間+AI): Notion上でドキュメント作成。Notion AIを活用してPRD、要件定義書、タスク分解・計画を生成します。
  2. 仮実装(AI単独): ドキュメントをコンテキストとして、AIがIssueを立ててブランチ作成、実装、Pull Request作成までを完全自動化します。
  3. 本実装(人間+AI): 仮実装をチェックアウトし、Cursorを活用してローカルで動作確認・仕上げを実施します。
  4. レビュー(AI→人間): AIによる静的解析と事前レビューを通過したものだけを人間がレビューします。

本フローを構築していくにあたり、細かいツールや技術選定は詰めていく必要はあるものの、ナレッジ管理ツールとして利用していたesaと、プロジェクト管理ツールとして利用していたRedmine/JiraはNotionへ移行・統合していきます。また、コード管理・CI/CDの基盤としてセルフマネージドでGitLabを利用してきましたが、生成AIのエコシステムへの統合がより進んでいるGitHubへと移行します。

このフローでは2の仮実装という、AIにより完全自動化されたステップが組み込まれていることがポイントです。これにより下図のように実装時の調整やQAでの不具合はすべてドキュメントにフィードバックされ、ドキュメントの成熟とともにAIで完全自動化されたステップの精度が向上し、全体が省力化され続けるサイクルを構築します。

AI駆動開発成熟の仕組み

新開発体制へ

また、AIの支援により、今後は誰もが「知識のフルスタック化」を実現できる時代です。1人のマネージャーが複数チームをマネジメントするのはもちろん、フロントエンドエンジニアがバックエンドも含めてリードするなど、単独でもユーザーに価値提供できる「PM兼アーキテクト」として振る舞える人材を増やしていきます。

フルスタックへの回帰・フルサイクルへの挑戦

これはこれまで分業化や専門性特化のチームを作ってきた流れからの方針転換となり、個人やチームのフルスタック化フルサイクル化を進めていきます。


方針2:ベンチャー回帰 〜ビジネス成果への直接貢献〜

AIによってデリバリー(実装)が超効率化されていく今後、エンジニアは浮いたリソースで何を目指すべきでしょうか? その答えが「ベンチャー回帰」です(2000年代創業の弊社としては、スタートアップというよりベンチャーという言葉がしっくりきます)。

フィーチャーチームからミッションチームへ

これまで、部としてはプロダクト開発のエンジニアをドメインと呼ばれる3つのチームに分けて運用してきており、それらは単に開発・運用する機能が割り振られた括りでしかありませんでした。 しかし今期からは、すべてのドメインがユーザーに直接届く「ビジネスミッション」を持つ体制へと方針転換します。

  • BUY: 購入者を強力に吸い上げ、集客とCVRを最大化する。
  • SELL: 世界中から商品を力強く吸い上げ、品揃えを最大化する。
  • SERVICE INFRA (SI): 決済や安心補償などの機能を提供し、ユーザーへの提供付加価値を最大化する。

単なる機能開発ではなく、全員が事業のKPIに直結したミッションを追い求める。この構造こそが、私たちの目指す真のベンチャー回帰の姿です。

新キャリアラダーを設計

また、全員がビジネス成果にコミットする組織へ進化するため、エンジニアのキャリアラダー(評価軸)もアップデートしました。従来の「デリバリー」中心の評価から、以下の6つの軸による評価へと拡張しています。

  • アウトカム :事業成果に接続した意思決定ができているか。
  • ディスカバリー :ユーザーの課題を正しく再定義できるか。
  • デリバリー: 設計〜実装〜テスト〜リリースを安定して回せるか。
  • 運用:SLO/障害/コスト/セキュリティを背負えるか。
  • コラボレーション(協働) :チームビルディングや他職種との協働。
  • レバレッジ : 仕組み化・標準化により、組織全体の生産性を引き上げる力。

実はこの6軸は、元々「AI時代に合わせよう」として作ったものではありません。先期の振り返りで再認識した「外部パートナーにはできない、内製エンジニア組織ならではの価値とは何か?」を徹底的に言語化した結果生まれたものです。

しかし興味深いことに、「内製組織の本質」を追求したこの6軸は、AI活用が進む時代にエンジニアに求められると思われるスキルセットとしてみても全く不自然ではありませんでした。

例えば、AIで簡単にモノが作れるようになったからこそ、「どこまでこだわるべきか」を事業成果から逆算するアウトカムや、本質的なユーザー課題を見極めるディスカバリーの重要性が増しています。また、AIには代替できない人間同士の高度なコラボレーションも不可欠です。

中でも「レバレッジ」は、次世代エンジニアのコアとなる概念です。日々の案件を無事にデリバリーするだけでなく、「AI駆動開発を実現し、価値提供のパイプライン自体を自分たちで構築・改善する(仕組みを創る)」ことが求められます。この仕組み作りは専任チームに任せるのではなく、各チーム自らが構築し、組織全体をブーストさせる姿勢を高く評価します。

まとめ

以上が、今期からのエンジニア組織の新しい運営方針です。

今のエニグモの環境で「事業にコミットし、AIで開発パイプライン自体を創り上げる」という経験は、こちらの記事でも語られているどこに行っても通用する非常に高い市場価値につながると確信しています。

この方針は決して理想を描いただけではありません。先期のAI活用の実績という裏付けがあり、NotionやGitHub、AIコーディングエージェントを全社で導入するための予算もしっかり確保してスタートしています。

「いつかできたら」ではなく「今年できる」。今期もこのスローガンを胸に、圧倒的な成果を生み出す1年に していきたいと思います。