こんにちは。 エニグモのWebアプリケーションエンジニアのレミーです!
カスタマーサービスに寄せられる問い合わせは、仕様確認から不具合の疑いまで内容が幅広く、エンジニアが対応にかかわる場面も少なくありません。近年はこのカスタマーサービス対応の現場でも、Notion AIやCursorといったAIツールの活用が急速に進んでいます。
この記事では、私たちのエンジニアチームがNotion AIとCursorをカスタマーサービス対応に取り入れたことで、業務がどう変わったのかを、導入前と導入後を比較しながら紹介します。「AIでカスタマーサービス対応は本当にラクになるのか?」を検討している方の参考になれば幸いです。

エンジニアチームにおけるカスタマーサービス対応とAI活用
カスタマーサービスチームから寄せられる問い合わせは、仕様確認・運用相談・不具合の疑いなど多岐にわたります。エンジニア側はまず一次対応(トリアージ)を行い、必要に応じて各機能領域(出品/購入/サービス基盤/フロントエンド)の担当へ連携しながら、解決まで伴走する体制をとっています。
現在この流れの中で主に活用しているAIツールは、次の2つです。
- Notion AI:問い合わせ内容の整理、過去の類似案件の検索、仕様ドキュメントの要約、議事録の作成
- Cursor:サービスのコードベース調査、該当ロジックの特定、修正案やデータ補正SQLのドラフト作成
どちらも「人の判断を置き換える」ためではなく、判断に必要な情報を早く揃えるために使っている、という感覚が実態に近いです。

AI導入前のカスタマーサービス対応で起きていた課題
AI導入前は、特に次のような部分に時間がかかっていました。
- 問い合わせを読んで、そもそもどの領域の話なのかを判断するまでに時間がかかる
- 「これ、前にも似た問い合わせがあった気がする」という、記憶に頼った探索
- 仕様が明文化されていない領域では、コードを読み進めるところから調査が始まる
- 調査内容をドキュメントに残す作業が後回しになり、結果的にナレッジが個人に溜まっていく
とりわけ自分の担当外の問い合わせが来たときの初動コストが大きく、「詳しい人に聞く」以外の選択肢を取りにくい状態でした。

AI導入後、カスタマーサービス対応はどう変わったか
一次切り分け(トリアージ)の変化
問い合わせが起票された段階で、まずNotion AIに内容を渡し、次の3点を整理させるようになりました。
- 事象の要約(何が / どの画面で / いつから)
- 想定される担当領域
- 過去の類似課題・関連する仕様ドキュメントへのリンク
これにより、問い合わせを開いてから「誰が見るべきか」を判断するまでの時間が明確に短くなりました。ワークスペース内の課題データベースやドキュメントを横断して検索してくれるため、記憶に頼った探索が減ったのが大きな変化です。
調査プロセスの変化
コードの調査ではCursorを使い、「この画面のこの挙動を制御しているロジックはどこか」という粒度で当たりをつけるようになりました。
- 担当外の領域のコードでも、関連ファイルまでは短時間でたどり着ける
- データ補正が必要な場合は、修正用SQLのドラフトを出させてから人がレビューする
- ログ調査の観点(どのログを、どの時間帯で見るべきか)の洗い出しにも活用する
ただし、AIの出力をそのまま本番に反映することはありません。特にデータ補正SQLは、従来どおりレビューを経てから実行しています。AIが担うのは「調査の入口を早くする」ところまで、という線引きを意識しています。
ドキュメント・ナレッジ共有の変化
以前は後回しになりがちだった調査記録の整備も、変わってきました。
- 対応中のやり取りやコメントをもとに、調査サマリのドラフトをAIに作らせる
- 週次のカスタマーサービス対応プロジェクト単位で、対応内容を集約・整理する
- 定例の議事録も、箇条書きメモから整った形に整形する
「書くのが面倒だから残さない」という状態が減り、属人化の解消という当初の課題に、実際に効いていると感じています。
これからのカスタマーサービス対応で取り組みたいこと
現時点で見えている、今後取り組みたいテーマを挙げます。
- 一次切り分けの自動化:起票された課題に対し、想定領域・緊急度・関連ドキュメントを自動で提案する。チャット通知の時点で、ある程度整理された状態にする。
- ナレッジの継続的な整備:調査手順のドキュメントを、実際の対応内容から継続的に更新し、「同じ問い合わせに何度も同じ調査をする」状態をなくす。
- 傾向分析:問い合わせの多い機能を分析してプロダクト改善につなげる。リードタイムを計測し、ボトルネックを可視化する。
- 判断の質を落とさない仕組みづくり:AIの出力を検証するチェック観点を明文化し、AIが誤った前提を出したケースを記録して振り返りに使う。

まとめ
AIを導入したからといって、カスタマーサービス対応が劇的にラクになった、という単純な話ではありません。実際に変わったのは、調査に取りかかるまでの時間と、ナレッジを残すハードルでした。
一方で、仕様の解釈や影響範囲の判断、本番データを触るかどうかの意思決定といった部分は、これまで通りエンジニアが責任を持って行っています。AIが情報収集を引き受けてくれる分、人が「判断」に使える時間が増えたというのが、現時点での率直な手応えです。
改善の余地はまだ多くありますが、定例で振り返りながら、少しずつ運用を整えていきたいと思います。
よくある質問(FAQ)
Q: AIにカスタマーサービス対応を任せると、対応品質は下がりませんか?
A: 品質に直結する判断(仕様解釈・影響範囲・本番データの変更可否)は、引き続き人が担っています。AIが担当するのは情報収集や調査の入口までで、最終判断は人が行う、という線引きを徹底しています。
Q: Notion AIとCursorはどう使い分けていますか?
A: Notion AIは問い合わせの整理・検索・要約・議事録などの「テキスト業務」、Cursorはコードベースの調査やSQLドラフト作成などの「開発業務」に使っています。
Q: データ補正SQLもAIに書かせて大丈夫ですか?
A: ドラフト作成には使いますが、そのまま実行はしません。従来どおり人のレビューを経てから本番に反映しています。