1. はじめに
こんにちは!エニグモのセキュリティチームです。
エニグモの中核事業の「BUYMA」は、世界中のパーソナルショッパーから商品を購入できる、会員数1,200万人超のCtoCのECプラットフォームです。 大規模かつグローバルなトラフィックを守るため、セキュリティの重要性は日々高まっています。
今回は、そんな当社におけるセキュリティチームの現在の取り組みや組織体制、そして今後注力していく技術的な課題についてご紹介します。 セキュリティエンジニアとしてエニグモで働く魅力や、リアルな業務の裏側が少しでも伝われば幸いです。
2. セキュリティ組織の体制とミッション
エンジニアリングの現場に根ざした「戦略的配置」
エニグモのセキュリティチームは、サービスエンジニアリング本部のインフラグループに所属しています。これは、セキュリティを単なる「管理・監査」の対象ではなく、サービスの信頼性を支える「エンジニアリング」の一部として捉えているためです。
各専門領域が集まるエンジニアリング組織の中に身を置くことで、最新の技術トレンドや開発のスピード感を共有しながら、実効性の高いセキュリティ施策をダイレクトに実装・反映できる「攻め」の体制を構築しています。
全社・グループ全体を網羅する広範なハブ組織
私たちのミッションは、自社サービスの開発現場に留まりません。専門家としての知見を活かし、グループ全体の安全をデザインする「ハブ」として、現在は主に以下のような領域でセキュリティ強化を推進しています。
全社セキュリティ・ガバナンス: コーポレートITチームと連携し、社内システムからプロダクトまで一貫した安全性の担保とセキュリティ水準の底上げ。
自社サービスのセキュアな開発支援: 「BUYMA」のサービス開発を担う開発とインフラ両方のエンジニアと連携し、安全なインフラ構築とエンジニアリングによる継続的な脆弱性対策の実施。
グループ全体のセキュリティ向上: エニグモおよび「BUYMA TRAVEL」をはじめとするグループ会社に対し、ルール策定支援や脆弱性情報の共有、対応手順の標準化を通じた防御力の強化。
新規事業のセキュリティ・アセスメント: 事業立ち上げの初期フェーズから伴走する、セキュリティ設計やリスクの評価。
業務領域の整理と「シフトレフト」の志向
現在のチームでは「シフトレフト」を強く志向し、役割分担を明確にしています。 セキュリティエンジニアの業務領域は広く、とかく日々の運用・構築作業に忙殺されがちです。エニグモでは、WAFのテスト・本番環境への導入・デプロイ作業や、脆弱性スキャンツールの設定といった一部の運用・構築作業は、開発プロセスやインフラ運用の中に組み込み、各チームと役割を分担する体制としています。
一方で、CrowdStrikeなどのアラート一次対応をはじめとするセキュリティインシデントの監視や初動対応は、引き続きセキュリティチームが責任を持って担っています。これにより、現場のリアルな脅威動向を把握しつつ、「セキュリティ戦略の設計・ガバナンス・自動化の仕組みづくり」といった、よりセキュリティ要件の策定や設計といった高度で全社的なセキュリティ課題へ注力できる環境を作っています。
3. 具体的な施策・プロジェクトの紹介
直近で取り組んできたプロジェクトをいくつかご紹介します。
脅威情報の継続的な収集とインシデントへの迅速な対応
日々高度化するサイバー攻撃に対抗するため、多様な媒体から脅威・脆弱性情報を継続的に収集・分析しています。近年多発しているパッケージエコシステムを標的としたサプライチェーン攻撃(Mini Shai-Hulud等) や、NGINX Riftをはじめとするクリティカルな脆弱性が発表された際には、即座に影響調査を行い、開発チームと連携して安全なバージョンへの固定化や設定の回避策などの対応を迅速に進めました。
AWS WAFの運用高度化とDDoS対策のチューニング
Webアプリケーションを強固に保護するため、AWS WAFを本番導入し運用・改善を進めています。WAFの導入・デプロイにあたってはインフラチームが担い、セキュリティチームはルールの高度な分析とチューニングに専念する体制をとっています。 実際のDDoS攻撃のデータとメトリクスを分析した結果、標準のマネージドルールに依存するだけでなく、アクセス元のIPやネットワークアドレス単位でのレート制限を適切に設定することが防御に非常に有効であることを確認しました。現在は、これらの知見を活かした独自のルールチューニングや、悪意のあるIPアドレス(AbuseIP)の自動ブロックの仕組みなどの実装を進めています。
CNAPPの運用改善と高度化(マルチクラウドのセキュリティ強化)
AWSとGCPを利用するマルチクラウド環境において、クラウド全体のセキュリティポスチャを継続的に管理するため、すでにAWS Security HubおよびGCP Security Command Center(SCC)を導入しています。 現在は、これらのCNAPPツールを用いた運用の改善・高度化を進めており、増大し続けるFindingsの内優先的に対応が必要な重大な設定ミスや潜在的な攻撃を選別し、リスクベースで効率的に脆弱性を潰し込んでいく基盤づくりに注力しています。
AIツールの安全な利活用に向けたセキュリティルールの策定
開発効率化のためにAIコーディングツール(Cursor、Claude Code等)やMCP(Model Context Protocol)の導入機運が高まる中、生産性向上とセキュリティのバランスを取るためのルール作りを主導しています。リスクの高いコミュニティ製MCP(BigQuery連携など)の利用制限ルールの策定や、RAGシステムの構築に向けたセキュリティガイドラインの作成など、現場と連携しながら新しい技術を安全に活用するための「攻めのセキュリティガバナンス」を進めています。
社内セキュリティカルチャーの醸成とセキュア開発の推進
エニグモにはエンジニアを中心に毎週実施している社内勉強会「Hacker's Delight」があり、ここで月に1回程度セキュリティの啓発活動をおこなっています。サプライチェーン攻撃などの最新事例や攻撃デモを交え、技術的な面白さを共有しながら現場の解像度を上げる場づくりを大切にしています。
※ 社内勉強会「Hacker's Delight」についてはこちらをご覧ください。 https://www.wantedly.com/companies/enigmo/post_articles/940864
それに加え、技術者・非技術者それぞれに向けたセキュリティ教育やテストを毎年実施しています。また、「セキュア開発実施の手引き」の策定や、Googleドライブ等でのファイル運用ルールといった日常的なガイドラインの整備も行い、現場のメンバー一人ひとりが自律的にセキュリティを高められるカルチャー醸成に努めています。
4. これから取り組むべき技術的課題
エニグモのセキュリティをさらに進化させるため、今後以下のような技術的課題に注力していきます。
DevSecOpsの推進とSBOMの導入
プロダクト開発において利用するOSS等のパッケージ、ライブラリが膨大になる中、昨今、サプライチェーン攻撃や新たなクリティカルな脆弱性が報告された際、どのプロダクトのどこに影響があるのか、調査や特定に膨大な時間がかかってしまうリスクが増加しています。SAST/DASTや依存ライブラリの脆弱性スキャン(SCA)を自動化したり、SBOM(ソフトウェア部品表)の導入・管理体制を構築し、これらの攻撃や脆弱性の多発に対して、影響範囲を即座に特定・自動ブロックできる仕組みを実装していきます。
グループ企業・委託先を含めた全社セキュリティガバナンスの強化
主力事業であるBUYMA本体のセキュリティ対策は成熟しつつあるものの、事業の多角化に伴い、グループ会社や新規事業、外部委託先を含めたサプライチェーン全体で見ると、セキュリティレベルにばらつきが生じているという懸念があります。経営会議でも重要課題として挙がったデータガバナンスの強化に向け、エニグモが守るべき情報資産とリスクシナリオの可視化を進めてきました。今後はこのリスクベースアプローチを基盤とし、BUYMA事業だけでなく、BUYMA TRAVELやHOUSE REVOといったグループ会社全体のセキュリティ体制構築(Security Hubの全アカウント適用、運用体制の構築や、脆弱性診断の展開など)や、外部委託先の情報セキュリティ管理プロセスの高度化に注力していきます。
AIを取り巻く新たな脅威への対抗とセキュリティ業務のAI化
開発効率化のために各種AIツールの活用が急速に進む一方で、開発環境を狙うMiasmaワームやプロンプトインジェクションなどの新たなリスクへの対応方針が急務となっています。また、開発スピードの向上に対して、セキュリティチームの人的リソースだけで全件レビューを行うことの限界も見え始めてきました。これらのAIツールを悪用した新たな脅威に対応するガードレールの構築を進めていきます。また、OWASP LLM Top 10などをベースにしたセキュリティチェックリストの作成や、LLMを活用したセキュリティレビューの自動化など、セキュリティ業務自体のAI活用にも取り組んでいきます。
Policy as Codeを用いたガードレールの構築
セキュリティチェックを厳格化すればするほど、影響のない誤検知(ノイズ)の対応や軽微なアラートによって開発の手が止まってしまい、開発者体験(DX)や事業のリリーススピードを損なってしまうというジレンマがありました。「Critical/Highのみデプロイをブロックする」「影響のない誤検知(ノイズ)を自動除外する」など、開発者体験(DX)と事業スピードを損なわずに、開発チームが自律して修正できるプロセスを構築していきます。
5. エニグモでセキュリティエンジニアとして働く魅力ややりがい
エニグモのセキュリティエンジニアは、単なる監視や定常作業に留まりません。世界中のユーザーが利用する大規模CtoC・越境ECの「BUYMA」という特性上、個人間取引特有の不正利用やグローバル環境における複雑な脅威シナリオが存在し、それらに対する「攻防の面白さ」をダイレクトに味わえるのが大きな特徴です。 また、現在はBUYMA TRAVELやHOUSE REVOといったM&Aによるグループ企業の拡大や新規事業も加速しています。ビジネスモデルやシステム環境が多様化する中で、全社共通のガバナンスの「型」を自ら設計し、適用していくアーキテクトとしての大きな裁量があります。 経営層から事業部門、インフラ・開発チーム、グループ会社に至るまで、多様な関係者と円滑にコミュニケーションを図りながら、全社規模の防衛戦略をリードできるのは当社ならではの大きなやりがいだと感じています。 また、EM(エンジニアリングマネージャー)と協働し、AI等の新技術の活用ルール策定やモダンなDevSecOps環境の構築といった「技術的に面白い課題」に、専門家の立場から大きな裁量を持って挑戦できる環境が整っています。
6. おわりに
エニグモでは現在こうした課題に一緒に立ち向かってくれる仲間を探しています。 ぜひ、一緒にエニグモグループ、BUYMAの成長を支えるセキュリティ体制をつくっていきませんか。

















