「心理的安全性」とソフトウエア開発

はじめに

こんにちは、株式会社エニグモの開発を担当しているグループでエンジニアリングマネージャーをしている後藤です。

この記事は Enigmo Advent Calendar 2023の15日目の記事です。

私は、開発グループでエンジニアリングマネージャーという役割をしています。この記事では、チームメンバーとの関わりの中で大切にしている「心理的安全性」についてポエムを書かせていただきます。

この記事の対象者

この記事の対象は、「心理的安全性」という言葉は聞いたことあるけどモヤッとしかわからないが大切そうだ、みんなが「心理的安全性」といっているから上っ面だけでも理解してドヤ顔をしたいという人を対象にしています。

この記事を通して、読者の方に「心理的安全性」がどうソフトウエア開発に影響を与えていると感じているのか、どうしたらソフトウエア開発チームにとって良い「心理的安全性」のある環境を作れるのかを自分で解釈する手助けになればと思っております。

あくまで、私の解釈ですのでこの記事を参考に自分の考え、理解を勧めていく手助けになれば幸いです。

因みに、私が思っている「心理的安全」なチームは以下のイラストのイメージです。

安心できるチーム

心理的安全性の定義とソフトウエア開発現場における私の理解

まずはじめに、「心理的安全性」という言葉ですが、Googleが発表した「成果を出すチーム」の条件に出てきて有名になったと理解しています。私もこの記事で知りました。それからずっとこの「心理的安全性」が引っかかっていました。

なぜならマネージャーと名のつく役割を担っている以上、「成果」を出すことを期待されています。それに、最も影響を与えるとなれば理解しないわけにはいきません。

ところがです、「心理的安全性(psychological safety)」について調べると、組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態のこと、と出てきます。また、そのような環境を作るために、自分の病気のことを話したり、プライベートなことも話せる関係を作っていくと良いと結ばれていました。

そうなのかー、私には無理じゃん、というのが正直な感想でした。エンジニア上がりでエンジニア仕事大好きなどちらかというとコミュ障寄りの私にとって、プライベートな話をしたり雑談をしながらチームを作って行くなんてできっこないと思ったわけです。

それでも、この「心理的安全性」を放置しておくわけにもいかないですし、別にプライベートな事が話せる事が必須条件ではないだろうという思いもあり私なりに噛み砕いてみました。

心理的安全性」が低いとどんな問題があるのか

心理的安全性」を理解するにあたり、「心理的安全性」が低いとどんな問題があるのかを考えてみました。

いろいろあるのですが、私が考えている一番の弊害は、開発をしていて「この部分少し不安だ」、「あの部分、実は問題がある気がする」といった「もやっと」した気持ちを他のメンバーに伝えることができない、伝えることに抵抗がある、ということではないかと考えました。

なぜなら、「この部分少し不安だ」、「あの部分、実は問題がある気がする」という部分は、なぜだか本番にリリースするとかなりの確率でエラーが起きたりします。そして、分かっていた本人は心のなかで「やっぱりか!」と思いながら修正に追われるわけです。

この「もやっと」を事前に伝えられていれば、トラブル対応に追われるという状況を回避できたはずです。

この、少し不安だが確信が持てない、間違っているかもしれないけど、みたいな事を伝えられるチームである事が生産性に影響を与えるのではないかと考えたのです。

「もやっと」を伝えられるチームにするために何をしているのか

私達のチームでは、毎週金曜日にKPTフレームワークをつかって振り返りをしています。この場でこの「もやっと」を伝えられる雰囲気を作る事を心がけました。

そうはいっても、「もやっと」を伝えてくださいね、と言ってみたところで意見が出てくるわけではありません。

そのため、1on1で出てきた、困ったことや解決した事を、些細なことでも良いので週次の振り返りに上げてもらうよう伝えることを根気よく繰り返しています。また、私自身が見つけた問題や、解決した事も話すようにしています。

このような事を繰り返していくことで、小さな事でも伝えて良いんだ、という空気ができてくる。また他の人が伝えてくれた小さな事が役に立った!という経験の積み重で、「もやっと」を伝えていこうという空気が出てくるのではないかと思っています。

まとめ

ソフトウエア開発の現場で「心理的安全性」は、小さな「もやっと」を伝えられるか、に影響すると考えています。

この小さな「もやっと」を意識的に引き出していくことで、ソフトウエア開発で発生する問題の芽を早いうちに摘む事ができ、開発生産性を改善できるのではないかと考えています。

そのために、小さな発見を伝えられる場作りを大切にしています。

おまけ

週末に BIBLIOTHECA というラジオ番組を聞いていたら、この「もやっと」が伝えられないチームの状況を適切に表す言葉に出会いました。この状況は、「集団浅慮(しゅうだんせんりょ)」と呼ばれる状況と一致しているのではないかと思います。

「集団浅慮(しゅうだんせんりょ)」とは、優秀な人達が集まって議論した結果、とても残念な結論を出して大失敗するという状況です。

そのラジオ番組によると、過去にケネディ大統領がこの失敗に陥り、そこからどう改善していったのかという事が以下の本に書いてある、と紹介されていました。この本の中に、マネージャーとして気をつけるべきことが潜んでいるのではないかと思っています。もっとも、集団浅慮に陥りやすいのは強いカリスマ的なリーダーがいるとき、というのがあったのでその部分は当てはまらない気がしますが、今度読んでみたいと思っています。

一緒に働く仲間を募集しています!

株式会社エニグモでは一緒に働く仲間を募集しています。興味のある方は以下の求人をご参照ください。

株式会社エニグモ すべての求人一覧

hrmos.co