こんにちは、AIテクノロジーグループのエンジニアの吉田です。
本記事はEnigmo Advent Calendar 2025の 18日目の記事です。
普段は検索システム全般、機械学習システムのMLOps、AI関連の機能開発を担当しております。
この記事では「AIでさがす」サービスのリニューアルについて紹介します。
「AIでさがす」サービスとは
「AIでさがす」サービスは、BUYMAのWebサイトおよびアプリで提供している、AIを活用した商品提案サービスです。
実際の機能は以下からご利用頂けます。(BUYMAアカウントでのログインが必要となります。)
ユーザーが文章で質問すると、AIが質問内容を理解し、おすすめの商品を提案します。例えば「春のデートにぴったりなワンピースを教えて」といった質問に対して、AIが回答文とともに具体的な商品を紹介します。
従来のキーワード検索では見つけにくかった商品や、ユーザー自身が気づいていなかった新しい商品との出会いを提供することで、BUYMAでのショッピング体験をより豊かにすることを目指しています。

※商品画像はモザイク加工しております。
リニューアルの背景
旧システムは、ChatGPT APIを活用した商品提案サービスでしたが、主な課題が3点ありました。
- BUYMAの知識不足
- ChatGPT が一般的な知識で回答を生成するため、BUYMAならではのトレンドや商品特性を反映できない。
- 根拠の不明確さ
- ChatGPT の回答に参照元がない。
- 検索キーワード生成の精度
また、リリースから2年が経過し、本格的にバージョンアップが必要なタイミングでもありました。
※旧システムの詳細はこちらの記事で紹介しております。
ちょうどチームメンバーが社内ドキュメントのAI検索システムを開発しており、この仕組みをBUYMAの多数の記事コンテンツに適用すれば、よりBUYMAらしい商品提案が可能になると考えました。
そこで、今回のリニューアルでは、BUYMA内の記事コンテンツ群をベースに会話するエージェントを作成しました。これにより、BUYMAならではの知識を持ったAIが、よりBUYMAでおすすめしたい商品を提案できるようになりました。
システム変更前後の比較
旧システムと新システムの違いは以下の通りです。
旧システムでは、ChatGPT が一般的な知識で回答を生成し、MeCab による単純な形態素解析で検索キーワードを生成していました。そのため、BUYMAならではの文脈を理解した商品提案が難しい状況でした。
新システムでは、BUYMA内記事コンテンツを参照した Vertex AI Search が回答文を生成し、Gemini が文脈を理解した検索キーワードを生成します。その結果、よりBUYMAらしい商品提案が可能になりました。
それぞれの処理フローは以下の通りです。
旧システム処理フロー
- BUYMA基幹システムから「AIでさがす」APIにリクエスト
- 「AIでさがす」APIがユーザーの質問を ChatGPT APIに送信
- ChatGPT が回答文とおすすめアイテムリストを生成
- アイテム名を MeCab (形態素解析)で解析し、検索キーワードを生成
- 検索APIで商品情報を取得し、ユーザーに表示

新システム処理フロー
- BUYMA基幹システムから「AIでさがす」APIにリクエスト
- 「AIでさがす」APIがユーザーの質問を Vertex AI Search に送信
- Vertex AI Search (事前にBUYMA内記事コンテンツをインポート済み)が回答文を生成
- 質問文と回答文を Gemini に送信し、検索キーワードを生成
- 検索APIで商品情報を取得し、ユーザーに表示

アーキテクチャー特徴
1. Vertex AI Search
Vertex AI Search を利用して、インポートしたBUYMA内記事コンテンツをベースに会話を行うエージェントを構築しました。
- BUYMA内記事コンテンツのインポート
- 約4000件の記事をデータストアにインポート
- プロンプト設計
2. Gemini
Gemini を活用する事により、会話内容から商品検索キーワードを生成する機能を作成しました。
- プロンプト設計
- 「ECサイトの検索キーワードを生成する専門家」として定義し、会話の文脈を理解して検索キーワードを生成
- MeCab との違い
- MeCab は単語の分解のみだが、Gemini は文脈を理解してブランド名・カテゴリ名・モデル名を組み合わせた検索キーワードを生成
実装時の課題・解決策・工夫した点
Vertex AI Search の幻覚への対応
- 初回質問時に Vertex AI Search が過去から質問が続いているような幻覚を見る場合がありました。当初は初回と2回目以降の会話を共通のプロンプトで行っており、「ユーザーの過去の質問履歴」の項目に入っている文言の有無から初回なのか、2回目以降の会話なのかを判断する指示を出していました。ところが、「過去」という文言に引きずられてなのか、初回なのに過去の質問をAI側が捏造して、その続きとして回答する場合が稀にありました。
- プロンプトテンプレートを初回用と2回目以降用の2種類に分け、初回用のプロンプトからは「ユーザーの過去の質問履歴」の文言自体を削除する事によって対応しました。
敵対的クエリへの対応
- 敵対的クエリ(不適切な質問)の場合、Vertex AI Search のAPIからのレスポンスフォーマットが通常とは異なるものになり、要約が生成できないにもかかわらず、無理やり商品紹介を行ってしまいました。
- 敵対的クエリーのフォーマットを検知した場合は、要約失敗として扱い、商品紹介を行わないように修正しました。
- この場合以外でも稀に異なるフォーマットのレスポンスになる場合があり、サービス継続に支障が出ないように都度改善を行いました。
Gemini のライブラリ移行
- もともと使用していたライブラリがサポート終了を迎えるため、社内では実績がない新しいライブラリに移行する必要がありました。移行後、従来使用していた Gemini モデルが初期設定では使用できず、次世代のモデルを試したところレスポンスタイムが大幅に遅くなってしまいました。新しいライブラリという事もあり、AIツールではなかなか解決できず、最終的にはGoogleサポートに問い合わせして解決に至りました。
得られた学びとノウハウ
AIツールの活用と限界
AIの不確定な挙動への対応
- Vertex AI Search の幻覚や部分的な失敗など、AIサービス特有の不確実性に対して、初回用と2回目以降用でテンプレートを分けるなど、細かな調整が重要でした。また、プロンプトだけではどうする事もできない場合があり、そのような場合は後処理でルールベースのロジックを追加する必要がありました。
効果測定
リニューアル後、以下のような指標が上昇しました。
- 1スレッドあたりの質問数の平均
- 会話の継続性が向上し、ユーザーが複数回質問を続けるようになりました。
- 1ユーザー1日あたりの質問数
- 利用頻度が向上し、ユーザーがより積極的に機能を活用するようになりました。
- 検索URLに遷移された回数
- 商品検索への誘導効果が向上し、実際の商品閲覧につながるケースが増加しました。
これらの結果から、BUYMA内記事コンテンツを根拠とした回答の提供と、文脈を理解した検索キーワード生成により、ユーザーの満足度と利用価値が向上したと考えられます。
直近の対応/今後の展開・課題
金額絞り込み機能の追加(今月対応)
- ユーザーからの要望が多い金額絞り込み機能の対応をしました。価格帯に関する質問に対して適切な商品提案ができていない課題があったため、Gemini で検索API用の金額フィルタークエリを生成することで対応しました。
コンテンツの拡充
継続的なメンテナンス
- AIのライブラリやモデルは随時更新されていくため、継続的なメンテナンスが課題となります。特に Gemini や Vertex AI Search などのサービスは進化が早く、新しいモデルへの対応や非推奨ライブラリ/バージョンから移行など、定期的な見直しが必要です。
まとめ
本記事では、「AIでさがす」サービスのリニューアルについて紹介しました。
旧システムでは ChatGPT と MeCab を使用していましたが、BUYMA特有の知識不足や根拠の不明確さなどの課題がありました。リニューアルでは Vertex AI Search と Gemini を採用し、BUYMA内記事コンテンツを根拠とした回答生成と文脈を理解した検索キーワード生成を実現しました。
実装時には敵対的クエリへの対応やAIサービス特有の不確実性への対処など様々な課題に直面しましたが、ロジックでの細かい制御やAIツールの活用により解決できました。リニューアル後は会話継続性や利用頻度、商品検索への誘導効果が明らかに向上しています。
明日の記事は同じAIテクノロジーグループの髙橋さんです。お楽しみに。